All Hereの科学者たちは、世界中から2,000人以上の脳科学の専門家が集まる名門カンファレンス「認知神経科学学会(CNS)年次大会」において、瞑想と脳科学をテーマに大きな存在感を示しました。
All Hereのチーフ神経科学ディレクターであるクリストフ・ミシェルと、脳波神経科学者のライオネルリオネル・ニューマン博士が、All Hereで行ってきた長年の研究成果を発表しました。今回紹介された研究は、瞑想中の集中力、マインド・ワンダリング、自己認識、そして内面感覚の体験に関する脳ベースの指標(ベンチマーク)に焦点を当てた、画期的な内容です。
ミシェル教授は、近年注目を集める「EEGマイクロステート解析」の分野を切り拓いてきた第一人者です。この「マイクロステート」とは、脳内で一瞬だけ現れ、繰り返し出現する活動パターンのことで、「思考の原子」とも呼ばれています。その理由は、ごく短い時間しか続かないにもかかわらず、認知機能の土台となる重要な役割を果たしているためです。
そのうちのひとつのマイクロステートは、脳のデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)に関連し、マインド・ワンダリングや心の声(セルフトーク)と結びついていますが、集中瞑想中にはその出現頻度が減少することが示されました。一方で、注意の制御や内的な気づきと関連する別の2種類のマイクロステートは、瞑想中に増加する傾向が見られました。これは、熟練した瞑想実践によって脳内に目に見える変化が起きていることを示しています。
ニューマン博士は、特に熟練した瞑想実践者に見られる、集中力や内面感覚に関する脳波指標について追加の研究結果を紹介しました。データによると、熟練者の脳内では、きわめて低周波の「インフラスロー波」が増加し、それと同時にアルファ波が抑制される傾向が見られました。この脳波の組み合わせは、身体的な自己意識を超えた体験と強く関連していることが示されています。
かつてはノイズとして見過ごされていたこれらのインフラスロー波ですが、深い瞑想の開始とともに一貫して増加し、瞑想の終了とともに減少することが明らかになりました。これらの発見は、瞑想が単なるリラクゼーションや思考の抑制にとどまらず、非常に深い内的な気づきと積極的に関わる状態であることを示唆しています。
2025年・認知神経科学学会(CNS)での議論は、これらの研究成果をきっかけに、活気に満ち、広がりを見せるものとなりました。新たな共同研究の可能性から、長年の仲間との再会に至るまで、科学に基づく瞑想の可視化・計測への関心は急速に高まっており、All Hereはその最前線に立っています。
現在私たちは、ハーバード大学、MIT(マサチューセッツ工科大学)、トロント大学、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)、キャンパス・バイオテック、ジュネーブ大学、そしてインド・日本・タイの主要研究機関の研究者との対話をさらに深めています。私たちの目標は、瞑想・神経科学・テクノロジーの交差点をさらに前進させていくことです。
CNS主催者の皆様、そして関わってくださったすべての協力者の皆様に、心より感謝申し上げます。この刺激的な分野をともに切り拓いていく、今後の継続的な交流を楽しみにしています。